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「精神保健福祉士」って? 受験資格から仕事内容まで詳しく解説!

「精神保健福祉士」とは、精神保健福祉領域における精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)の国家資格です。近年、日本でも心の問題を抱える方々への理解が深まり、社会復帰・社会参加に向けた支援などの取り組みが活発になっています。そのような時代において、精神保健福祉士が担う役割が、大いに期待されています。今回の記事は、そんな精神保健福祉分野の専門家である「精神保健福祉士」について、詳しく解説していきます。

精神保健福祉士の定義とは

精神保健福祉士は、「精神保健福祉士法」にもとづく国家資格です。定義としては、以下のようなものになりますので、ご参照ください。

精神保健福祉士は、精神保健福祉士法(平成9年法律第131号)に基づく名称独占の資格であり、精神保健福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者を言います。
※引用:厚生労働省「精神保健福祉士について」より

精神保健福祉士の歴史について

「精神保健福祉法」は、昭和25年(1950年)に精神衛生法として制定されましたが、昭和62年(1987年)の改正時に「精神保健法」と改称しております。その後、平成7年(1995年)の改正で、現在の「精神保健福祉法」という名称に改められ、1997年に施行されました。
日本では、1950年代から精神科の病院で活躍している精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)がいましたが、精神保健福祉法の施行に伴い、精神に障害を負われた方々の自立や社会復帰のために、今まで以上に専門的知識・技術を持ったソーシャルワーカーが必要となりました。そのような経緯を経て、国家資格としての「精神保健福祉士」が誕生したのです。尚、公益財団法人社会福祉振興・試験センターの発表によると、2019年7月末日時点の精神保健福祉士の資格登録者数は、86,670人となっています。

精神保健福祉士の主な就業先・仕事内容は?

精神保健福祉士の基本となる業務は、精神的な障害のある方々を支えていくことになります。具体的には、病院などに入院中の精神障害者の在宅生活復帰・その後の生活の支援などを行う、社会復帰に向けた日常訓練、就労支援から職場の定着支援など、その業務は多岐に渡ります。また、勤務先・配属先によって、精神保健福祉士の仕事にも若干の違いがあります。以下、主な就業先と仕事内容について紹介してきますので、ご参照ください。

医療機関

医療機関における精神保健福祉士の就業先としては、精神科病院や心療内科のクリニックなど、様々な施設があります。精神保健福祉士は、他職種との連携を保つことが義務づけられています(精神保健福祉士法第41条)ので、医療機関においての業務は、主治医や看護師、作業療法士・臨床心理士といったような、他職種と共に、医療チームの一員として業務にあたります。
また、精神保健福祉士は医療職ではありませんので、医師の指示で業務を行うものではありませんが、「主治医がいれば、その指導を受けること」も精神保健福祉士の義務として定められています。医師と協力しつつ、精神保健福祉士独自の視点でもって、集団精神療法や認知行動療法といった治療、各種グループワークなどのリハビリテーションプログラムなどを利用者に行います。

福祉・行政機関

福祉施設、行政機関における精神保健福祉士の就業先としては、就労継続支援事業所や地域活動支援センター、市役所区役所に精神保健福祉センターなどがあります。精神障害者の生活支援を中心に、電話や対面・訪問などによる相談などのサービスを行っていきます。就労に関する支援、トレーニングなども実施します。また、関係機関のネットワーク作り、地域住民への啓蒙活動・ボランティア活動などの企画・調整などの業務も担います。

養護施設

グループホームやケアホーム、児童養護施設や生活保護法で設置される救護施設といった養護施設なども、精神保健福祉士が活躍する場所になります。高齢化社会に伴い、高齢者のためのケアプランを作成、生活全般のサポートするといった業務は重要なものとなっています。また、求人数はあまり多くないようですが、障害児施設、児童養護施設、母子生活支援施設などで、日常生活に関する助言・自立援助などを行う相談員といった立場で勤務しています。

司法施設

2003年に制定された、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障がい者の医療及び観察に関する法律」に伴い、精神保健福祉士の新たな役割として、司法施設での業務が挙げられます。法律に基づく指定された医療機関で、精神保健福祉士は医療チームの一員となり、「精神保健参与員」や「社会復帰調整官」として、社会復帰プログラム・システム作成などの様々な業務を行います。また、矯正施設などの精神保健福祉士の配置も徐々に進んでいるようです。

企業・教育機関/その他

近年は、教育現場のメンタルヘルスなどの相談援助、スクールソーシャルワーカーとして子どものいじめ・不登校問題などに関わっていくこと、企業内にて職場のストレスやうつ病対策、ハローワークなどで精神障害者雇用トータルサポーターとして勤務する、といった形で活躍する精神保健福祉士も増えています。今後の精神保健福祉士の就業先としても、注目と期待を集めています。

精神保健福祉士になるには?

精神保健福祉士は国家資格になりますので、精神保健福祉士国家試験を受けて合格しなくてはなりませんが、そのための受験資格が必要になります。以下にその条件をまとめましたので、ご参照ください。

精神保健福祉士の受験資格

・保健福祉系大学4年……指定科目履修
・保健福祉系短大(3年/2年)……指定科目履修+実務(1年/2年)
・福祉系大学4年……基礎科目履修+短期養成施設等6ヶ月
・福祉系短大(3年/2年)……基礎科目履修+相談援助実務(1年/2年)+短期養成施設等6ヶ月
・社会福祉士登録者……短期養成施設等6ヶ月
・一般大学……一般養成施設等(1年以上)
・一般短大(3年/2年)……相談援助実務(1年/2年)+一般養成施設等(1年以上)

参考:公共財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験」より

精神保健福祉士国家試験の試験内容について

精神保健福祉士国家試験は、毎年1回実施、2日間に渡って行われます。試験科目は16科目、合格基準は「問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者」、それを満たした者のうち、「試験科目16科目群(精神保健福祉士法施行規則第6条の規定による試験科目の一部免除を受けた受験者に該当する者は、5科目群)の各科目群すべてにおいて得点があった者」とあります。
具体的な試験科目は、以下のようになります。

[1] 精神疾患とその治療
[2] 精神保健の課題と支援
[3] 精神保健福祉相談援助の基盤
[4] 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
[5] 精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システム
[6] 人体の構造と機能及び疾病
[7] 心理学理論と心理的支援
[8] 社会理論と社会システム
[9] 現代社会と福祉
[10] 地域福祉の理論と方法
[11] 福祉行財政と福祉計画
[12] 福祉行財政と福祉計画
[13] 福祉行財政と福祉計画
[14] 低所得者に対する支援と生活保護制度
[15] 保健医療サービス
[16] 権利擁護と成年後見制度

精神保健福祉士国家試験の合格率・難易度って?

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成27年(第17回) 7,183名 4,402名 61.3%
平成28年(第18回) 7,173名 4,417名 61.6%
平成29年(第19回) 7,174名 4,446名 62.0%
平成30年(第20回) 6,992名 4,399名 62.9%
平成31年(第21回) 6,779名 4,251名 62.7%

国家試験に合格後に、精神保健福祉士としての資格登録の申請をします。新規登録申請の流れとしては、必要書類等を「財団法人社会福祉振興・試験センター」に簡易書留で提出、受理後に審査を経て、登録簿に登録され、1カ月程度で登録証の交付が行われます。尚、登録免許税として15,000円、登録手数料として4,050円が必要となります。
詳細は、下記URLをご参照ください。

財団法人社会福祉振興・試験センター「資格登録」

精神保健福祉士と社会福祉士の違いって?

精神保健福祉士と混同されやすい資格として、社会福祉士という国家資格があります。実際には、支援する対象者に明確な違いがありますので、それぞれの役割を整理しておきましょう。
・精神保健福祉士……支援対象者は精神障害者のみ。
・社会福祉士……支援対象者は高齢者や児童、低所得者、または障がいを抱える人全て。

支援対象者に違いはありますが、試験の共通科目も多いです。どちらも医療・介護及び福祉の現場などで今まで以上の活躍が期待されていますので、両方の資格を取得することは、将来のキャリアアップという意味でも有効な手段と言えるでしょう。

精神保健福祉士の今後について

精神障害に対する社会的な理解が深まる中、精神保健福祉士の役割は今後ますます重要なものとなっていくことが予想されます。待遇面では、精神保健福祉士は国家資格ですから、基本的に給与形態は国家公務員に準じた形となっている場合が多いようです。年収としてはそこまで高いとは言えず、勤め先や年齢・役職などで差異はありますが、平均して年収300~400万前後となっています。但し、各種手当やボーナスといった面である程度は充実しているようです。いずれにしても、現代社会に蔓延する「心の問題」を鑑みても、精神保健福祉士としての役割や職域は今まで以上に広がっていくでしょうし、需要も高まっていくことは間違いないでしょう。

まとめ
近年は、精神保健福祉サービスなども身近になり、そういったサービスを必要とする方々を支援する専門職である精神保健福祉士の仕事は、大変に重要なものであり、社会的な価値も高いと考えられます。精神に障害を負われた方々を支援し、権利を擁護する担い手として、精神保健福祉士は様々な施設・分野で求められ、重宝される人材です。今回の記事で興味を持たれた方は、ぜひ精神保健福祉士の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。