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義肢装具士とは? 仕事内容から資格の取り方まで徹底解説!

「義肢装具士」という職業があることを、皆さんはご存知でしょうか。義手・義足づくりの専門家であり、国家資格となりますが、あまり職業の名前自体を聞いたことがない、という方も多いかもしれません。近年は、パラリンピックなどの影響もあり、アスリートの義手や義足を製作する職種として、ある程度認知されつつあります。今回は、そんな「義肢装具士」について詳しく解説していきます。

義肢装具士ってどんな職業?

義肢装具士は、英語表記で「Prosthetist and Orthotist」、略してPOとも呼ばれる医療系の国家資格となります。1987年に成立した義肢装具士法により、「厚生労働大臣の免許を受けて、義肢装具士の名称を用いて、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合(以下「義肢装具の製作適合等」という。)を行うことを業とする者をいう」と定義されております。公益財団法人テクノエイド協会の発表によると、2019年現在の有資格者数は5,558名で、養成校は全国でわずか10校となっています。

義肢装具士の仕事について

義肢装具士の主な役割は、医師の指示の下で「義肢」または「装具」を製作し、患者さん一人ひとりにあわせた適合を行うといったことになります。また、医療チームの一員として、理学・作業療法士などのリハビリ職と連携を取り、患者さんの社会復帰に向けたサポートを担うことも求められています。
義肢をつけた競技選手にメカニックとして帯同し、スポーツ現場などで義肢の調整などを行うなど、義肢装具士が活躍する場は広がりつつあるようです。

義肢装具の製作の流れについて

それでは、実際に義肢装具士がどのように義肢装具の製作に取り組んでいるのか、基本的な流れを見ていきましょう。

義肢装具士の仕事は、モノづくりというイメージが強いですが、実際には対象となる患者さんの不安やストレスを取り除くための心のケアも必要となります。義肢装具製作のプロフェッショナルとしての技術は勿論のこと、医学やリハビリテーションの知識、メンタルケアを含めたコミュニケーション能力も必須となります。

義肢装具について

「義肢」と「装具」については、以下の説明をご参照ください。

義肢(Prosthesis)
病気やケガなどにより手や足を失った方が、装着する器具で、手の代わりになるものを義手、足の代わりになるものを義足と呼びます。義肢は、元の手や足の機能と形を復元するため装着、使用する人工の手足です。
装具(Orthosis)
病気やケガなどにより手や足、腰や首など体の部位に、痛み、損傷、麻痺などが生じたときに、治療や症状の軽減を目的として装着する器具です。手や腕に装着するする装具を上肢装具、脚に装着する装具を下肢装具、腰、胸、首に装着する装具を体幹装具と呼びます。また、治療、リハビリ、日常生活の補助などの目的で使用するものや、予防や矯正を目的とするものもあります。

引用:公益社団法人日本義肢装具士協会ホームページより

義肢装具士になるにはどうすればいい?

それでは、実際に義肢装具士を目指すにはどうすればよいのでしょうか。義肢装具士は「義肢装具士法」に規定された国家資格となりますので、指定の養成校に入学して既定の単位を修了後、国家試験の受験資格が得ることができます。

受験資格について

(1)学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することができる者(法第14条第1号の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が学校教育法第90条第2項の規定により当該大学に入学させた者又は法附則第4条の規定により学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者とみなされる者を含む。)であって、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した義肢装具士養成所において、3年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得したもの(平成31年3月11日(月曜日)までに修業し、又は卒業する見込みの者を含む。)

(2)学校教育法に基づく大学若しくは高等専門学校、旧大学令(大正7年勅令第388号)に基づく大学又は義肢装具士法施行規則(昭和63年厚生省令第20号。以下「規則」という。)第13条に規定する学校、文教研修施設若しくは養成所(以下「大学等」という。)において1年(高等専門学校にあっては、4年)以上修業し、かつ、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者であって、法第14条第2号の規定により文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した義肢装具士養成所において、2年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得したもの(平成31年3月11日(月曜日)までに修業し、又は卒業する見込みの者を含む。)
なお、厚生労働大臣の指定する科目は、次のとおりである。(昭和63年厚生省告示第100号)
ア心理学、倫理学、社会学、人間発達学及び社会福祉学のうち1科目
イ数学、物理学、生物学及び数理統計学のうち2科目
ウ外国語
エ保健体育

(3)職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第44条第1項の規定に基づく義肢及び装具の製作に係る技能検定に合格した者のうち規則第14条に規定する者であって、法第14条第3号の規定により文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した義肢装具士養成所において、1年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得したもの(平成31年3月11日(月曜日)までに修業し、又は卒業する見込みの者を含む。)

(4)外国の義肢装具の製作適合等に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国で義肢装具士の免許に相当する免許を受けた者であって、厚生労働大臣が(1)、(2)又は(3)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの

(5)義肢装具士として必要な知識及び技能を修得させる学校又は養成所であって、法附則第2条の規定により文部大臣又は厚生大臣が指定したものにおいて、法施行の際(昭和63年4月1日)現に義肢装具士として必要な知識及び技能の修得を終えている者又は法施行の際現にこれを修得中であって、法施行後にその修得を終えた者

引用:厚生労働省「義肢装具士国家試験の施行」より

養成校について

全国の義肢装具士養成校は、以下の10校となっております。
・国立障害者リハビリテーションセンター学院
・専門学校 日本聴能言語福祉学院
・熊本総合医療リハビリテーション学院
・神戸医療福祉専門学校
・西武学園医学技術専門学校
・北海道ハイテクノロジー専門学校
・北海道科学大学
・新潟医療福祉大学
・人間総合科学大学
・広島国際大学

養成校の内訳としては、大学が私立4校、専門学校などの養成所が国立1校・私立5校です。大学と専門学校の違いは、4年制か3年制という点になります。
大学でも専門学校でも、学んでいく知識や技術に大きな違いはありませんが、カリキュラムや校風などの多少の差異はありますので、義肢装具士を目指す上で、自分にとって最も適した学校を選ぶためにも、綿密な事前調査を必ず心掛けるようにしましょう。

義肢装具士国家試験の内容と合格率は?

認知症を患った方は、今まで自分が「できていたこと」ができなくなってしまったことに、不安と悲しみを抱いています。リハビリテーションといった形で、指示を受けて「訓練」するにしても、手順が覚えられずに混乱してしまったり、「指示されている」ことに拒否感や怒りが生まれてしまっては、意味がありません。「作業療法」は、日常生活の中で自立して行えることや、今まで得意だったことや好きでやっていたことなどを、対象となる方の性格や、今までの人生の背景を理解した上で取り入れていきます。

【国家試験の試験科目概要】
・臨床医学大要(臨床神経学、整形外科学、リハビリテーション医学、理学療法・作業療法、臨床心理学及び関係法規を含む)
・義肢装具工学
・図学・製図学、、機構学、制御工学、システム工学、リハビリテーション工学
・義肢装具材料学(義肢装具材料力学を含む)
・義装具生体力学
・義肢装具採型・採寸学
・義肢装具適合学

引用:公益財団法人テクノエイド協会ホームページより

厚生労働大臣の指定を受けて試験を実施している「公益財団法人テクノエイド協会」の発表によると、第32回義肢装具士国家試験の受験者数は263人、合格者は235人となっており、合格率は89.4%です。数値だけ見ると、比較的高い合格率となりますが、他の国家資格と比べて受験者数も少ないため、一定の高い水準を保っているのではないでしょうか。今後、義肢装具士の認知度が高まっていくにつれて、受験者数や合格者数も変動していくかもしれません。

義肢装具士の就業先・年収について

ここでは、義肢装具士の就業先と気になる年収について解説します。将来、義肢装具士の道を検討している方々も、ぜひご参照ください。

義肢装具士の主な就業先

義肢装具士の主な就業先は、民間の義肢装具製作所となります。その他では、リハビリテーション施設などで、理学・作業療法士と共にリハビリを進める仕事もあります。また、数は多くありませんが、病院に常駐している義肢装具士もいます。さらに、スポーツ現場においても義肢装具士の需要・存在感は高まっています。パラリンピックなどで、スポーツトレーナーと共に「メカニック」として、競技選手と帯同してメンテナンスなどに従事します。

義肢装具士の年収・給料はどれくらい?

勤務先にとって多少の違いはありますが、現状は平均年収が300~500万円前後となっており、月給は約18~30万程度です。専門性の高さを鑑みても、待遇面で恵まれているとは正直言えませんが、現時点では社会的認知度も低いことが一因となっているようです。今後、義肢装具の認知度が高まり、業界全体が発展していくことで、待遇面の改善も期待できるのではないでしょうか。

義肢装具士を目指す方へ

義肢装具士になるためには、モノづくりに興味があって、手先の器用さや幅広い医療知識があることは大前提となります。同時に、これまで説明してきましたように、対象となる人の心のケアも含めた、コミュニケーション能力が問われる職業となります。身体の一部に欠損、または機能障害を負った方々の喪失感を少しでも埋めるべく、専門的な技術と粘り強い精神力でもって、一人ひとりのQOLをより良い方向へと導く仕事が、義肢装具士という職業です。ニーズの高まりに対して、人材がまだまだ少ないのが現状ですから、義肢装具士として担う役割は、重要な価値を持っていると言えましょう。

まとめ
義肢装具士は、専門的な技術を駆使して、利用者の社会復帰や生きる喜びをサポートできる、現時点では携わる人数も少ない珍しい職業です。だからこそ、情熱を持って仕事に取り組んでいる人が多くいます。今回の記事で義肢装具士の仕事に興味を持たれた方は、ぜひその一員となって、義肢装具を必要としている方々の為に努力できる、義肢装具士を目指してください!