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ニーズが高まる「作業療法士」将来性ってどうなの?

日常生活のあらゆる動作、「作業」を通して、身体機能の回復・維持のみならず、心のケアも担当する作業療法士(OT)。超高齢化社会に伴う介護予防や認知症ケアなどが注目される今、心と体のリハビリテーションを担う作業療法士の需要も高まっているとされています。今回は、そんな作業療法士の現状から将来性まで、詳しく解説していきます。

作業療法士の現状について

日本作業療法士協会が刊行している「日本作業療法士協会誌 第88号」によると、2019年6月の時点での作業療法士の有資格者は94,241名(会員数は60,076名)となっています。以前ほどではないですが、現時点では現場における作業療法士の人手不足という声はありますし、冒頭で述べたように、心と体のリハビリテーションの専門家である作業療法士の活躍できる場所は多岐に渡ります。高齢化社会に突入する現代における、作業療法士の需要は高いと言えるでしょう。とはいえ、理学・作業療法士が近い将来に供給過多になるといった報告も出ています。作業療法士を取り巻く実態は、どのようなものになっているのでしょうか。

作業療法士が活躍できる場所って?

作業療法士の主な就業先は、総合病院や回復期を専門とするリハビリテーション病院などの医療施設になりますが、精神科病院なども、身体機能だけでなく精神領域も担う作業療法士が活躍できる場所です。また、介護老人保健施設や有料老人ホーム、デイサービスなどで利用者一人ひとりのニーズに沿ったリハビリテーションを行います。更に、「作業療法」の観点から、認知症ケアに従事する作業療法士も増えています。高齢化社会が深刻化し、認知症への理解が社会的進む中で、心身どちらのアプローチも可能な作業療法士の活躍する場所は、今後も広がっていくのではないでしょうか。

作業療法士の就業率について

第3回理学療法士・作業療法士需給分科会の「理学療法士・作業療法士の需給推計について」によると、20代前半の作業療法士の就業率は、男女どちらも90%を超える結果となっています。女性では31歳以上から就業率が約80%となり、41歳以降からまた緩やかに上昇していきますが、これは結婚や出産などがきっかけで退職、子育てなどが落ち着いて復職を果たした、といったことが理由として考えられます。作業療法士は女性の割合が7割近いこともあり、女性にとっては復職もしやすい職業であると言えましょう。

作業療法士の年収について

平均年齢
32.9歳
勤続年数
6.1年
月額給与
285,200円
年間賞与
662,200円
平均年収
4,084,600円

※年収の計算は、「きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」となります。

国税庁「平成29年分民間給与実態統計調査結果」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の年間の平均給与は、432万円となっているので、作業療法士の平均年収は若干下回っている結果となりました。理由としては、作業療法士として働くメインの年齢層はキャリアの浅い20代で、かつ作業療法士の7割近くを占めるのが女性という点が、一つの要因となっているようです。下記の表を参照頂ければ分かるように、男女間での年収は約20万ほどの差が出ているという結果となっております。但し、上述した日本全体の平均給与額を男女別にみると、男性532万円、女性287万円となっており、作業療法士の男女別の給与格差は、比較的小さいと言えます。

性別 年齢 支給額 年間賞与その他特別給与額 年収
32.8歳 292,300円 662,700円 4,170,300円
33.0歳 277,300円 661,600円 3,992,800円

※参照:厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より

作業療法士の数は今後も増える?

第54回となる平成31年度の理学療法士・作業療法士国家試験の結果によると、理学療法士(PT)の合格率は85.8%(新卒者は92.8%)。受験者数は12,605人と、平成29年度に続いて歴代2番目に多い結果となり、有資格者は172,285人となっています。対して、作業療法士(OT)の合格率は71.3%(新卒者は80.0%)と過去二番目の低さとなり、受験者数こそ6,358人と一時期と比べて増加傾向に転じておりますが、合格者数は平成30年度の4,785人と比べて4,531人となっています。作業療法士を目指す人は増えているが、狭き門になりつつあるというのが現状と言えるのではないでしょうか。

近い将来に供給過多になる?

平成31年に行われた「第3回 理学療法士・作業療法士需給分科会」の報告では、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の供給数が、2040年頃には需要数の約1.5倍になるといった需給推計結果が示されています。現場レベルでは人手不足が叫ばれる中、需要対策を進めていく以上はいずれは供給に追い付き、追い抜くことは必然とも言えますが、現時点ですぐに就職難になるような可能性は低いと思われます。

作業療法士のこれからについて

リハビリ職の中でも、唯一精神的な障がいを患った方への専門的なアプローチが可能な作業療法士の役割は、まだまだ多くの可能性があり、未開拓な職種であるとも言えます。勿論、作業療法士個人個人が自己研鑽を重ね、専門職としての質の向上を目指していくことの大切さは、言うまでもありません。超高齢化社会を迎える現代において、作業療法士が必要とされる仕事はどのようなものがあるのでしょうか。

介護現場で需要が高まる!

理学療法士と同じく、作業療法士の主な就業先は医療施設になりますが、介護・福祉施設の需要が高まっていることや、介護分野における慢性的な人手不足については、すでに述べました。生活介護事業に対しての、作業療法の関与の重要性も理解されつつあります。高齢者の方々に対して、将来に向けた予防的なアプローチといったリハビリを行うことや、訪問リハビリなどにおいては、生活動作の訓練のみならず、介助者への指導、自宅を確認して手すりの位置などをチェック・改善の提案をする等々、日常生活に根差したリハビリテーションの専門職としての作業療法士が担う業務は多くあるのです。

精神領域における作業療法士の役割

精神疾患や発達障がいなどに対する理解が社会的にも深まる中で、心の問題にもアプローチが可能な作業療法士の役割はとても重要なものとなります。また、作業療法を用いた認知症ケアも、今まで以上に注目を集めています。対象となる方々のQOLの向上を目指し、それぞれの「自分らしさ」に価値を見出す作業療法士の心のリハビリテーションは、年齢問わず有効なものである、と言えましょう。

自分とマッチする職場を見つける方法とは?

作業療法士としての個人個人が、どのような職場が適しているのかは一概には言えませんが、先述したように、現状の主な就労先は病院などの医療施設になります。作業療法士が働く施設や領域の割合がどのようなものになっているのか、調べてみました。

作業療法士が働く施設・領域の割合について

日本作業療法士協会が発表した「2017 年度 日本作業療法士協会会員統計資料」によると、医療法関連施設で勤務している作業療法士の会員数は35,049人、介護保険法関連施設では5,849人、老人福祉法関連施設では2,150人、児童福祉法関連施設では955人というデータが出ています。これだけ見ても分かるように、介護・福祉施設などで働く作業療法士の割合の少なさが理解できると思います。
また、対象疾患別に見ると、脳血管疾患が22,409人と圧倒的に多いです。精神及び行動の障害に携わっている作業療法士の小計は8,471人となっており、その中でも心理的発達及び小児/青年期に通常発達する行動/情緒の障害は612人です。まだまだ、発達障害などの分野で働く作業療法士は少ないと言えるでしょう。

目指す作業療法士のビジョンは明確にしよう

先述した結果だけ考えると、需要のある脳血管疾患などの領域は、転職の際にもつぶしがきくと言えましょう。同時に、まだまだ人材不足の発達障害など、精神領域のプロフェッショナルとして働ける作業療法士は、今後重宝されていく可能性が高いと言えます。求められている専門領域などは、地域によってもばらつきがありますので、就職・転職の際には綿密な事前調査は必ず行うようにしましょう。
しかしながら、一番重要なのは、「どんな作業療法士を目指したいのか?」といったビジョンを明確にする、ということです。待遇面や安定も当然大切ですが、リハビリテーションの専門職として、どういった形で活躍したいのか、どんな風に人の為に頑張りたいのか、といった目的意識があれば、そのまま自分自身のモチベーションの高さにも繋がるはずです。

これから作業療法士を目指す方へ

現在、既に養成校などで勉強されている方はもちろん、作業療法士の仕事に何となく興味があるといったような若い方々は多いと思います。言うまでもなく、作業療法士は国家資格であって、簡単に取得できるようなものではありません。また、苦労して取得してからも、日々進歩を続ける医学と同じように、常に新しい知識・技術を吸収する勤勉性や、状況に応じて柔軟に思考できるスキルが求められます。繰り返しになりますが、自分がどのような作業療法士を目指したいのか、といった目的意識は常に明確にしておきましょう。作業療法士の数が増加すれば、就職などの競争率も上がっていきます。あなたが描く理想の作業療法士を目指して、必要な知識や技術を貪欲に吸収していくことで、作業療法士としての価値も高まっていくでしょう。

まとめ
身体、精神面どちらの分野においても、リハビリテーションのプロフェッショナルとして活躍できる作業療法士は、今後も更なる飛躍が期待できる職業です。また、リハビリ分野における他の専門的な職種との連携を取る際に、リーダーシップを発揮できる立場にあると言えます。将来性がある作業療法士だからこそ、職場で重宝され、患者さんや利用者の方々にも高い信頼を得るためには、何より自分自身の努力が不可欠です。是非、そのような素敵な作業療法士を目指して頑張ってください!