「認知症ケア専門士」とは、名前の通り認知症ケアに特化した優れた知識・技術を持った民間資格となります。介護・福祉・医療業界におて高い知名度を誇り、認知症ケアに携わる理学・作業療法士や言語聴覚士とも関わる資格と言えましょう。
今回は、そんな「認知症ケア専門士」について詳し解説していきます。資格取得を目指している方も、初めて名前を聞いたけど興味があるという方にとっても、必読の内容となっています!
「認知症ケア専門士」は、「一般社団法人日本認知症ケア学会」が主催する民間資格となります。学会が定義する資格の概要は、以下にようになっています。
「認知症ケア専門士」とは認知症ケアに対する優れた学識と高度の技能、および倫理観を備えた専門技術士を養成し, わが国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献することを目的として設立された 一般社団法人日本認知症ケア学会認定の資格です。引用:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士 公式サイトより |
2005年、初めて認知症ケア専門士の試験が行われました。第1回の受験者数は5,121人でしたが、13回目を迎えた2017年の時点で、32,591人の認知症ケア専門士が活躍しております。その中で専門士保有資格を見ると、介護福祉士が断トツでトップの19,580人、看護師が8,293人というのも目立ちます。リハビリ職の中では、作業療法士がトップで1,288人となっており、理学療法士は524名、言語聴覚士は144名となっています。
それでは、具体的に認知症ケア専門士の資格はどのようにすれば取得できるのか、受験資格や試験の難易度、合格率なども含めて紹介していきます。
「認知症ケア専門士制度規則」によると、専門士の資格として以下のものがあります。 1.認知症ケアに関連する施設,団体,機関等において試験実施年の3 月31 日より過去10年間において3 年以上の認知症ケアの実務経験(教育・研究・診療を含む)を有する者 2.認定委員会の専門士認定試験および審査に合格すること |
実務経験とありますが、必ずしも勤め先が認知症専門の施設である必要はなく、職務上で認知症ケアに携わっていれば受験は可能となっています。また、国家資格の有無も問いません。尚、3年間の勤務に、ボランティアや研修期間は含まないことは注意しましょう。
第1次試験(筆記試験) |
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(1) 認知症ケアの基礎 (2) 認知症ケアの実際Ⅰ:総論 (3) 認知症ケアの実際Ⅱ:各論 (4) 認知症ケアにおける社会資源 |
第2次試験(論述・面接試験) |
・論述……認定委員会より出題される事例問題に対する論述 ・面接……6人を1グループとした面接(当日発表するテーマに則した,個々の1分スピーチとディスカッション/約20分) |
2次試験は論述・面接試験となります。下記の5つの要因を満たした方が合格となります。 ①適切なアセスメントの視点を有している者 ②認知症を理解している者 ③適切な介護計画を立てられる者 ④制度および社会資源を理解している者 ⑤認知症の人の倫理的課題を理解している者 |
参考:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士 公式サイトより
日本認知症ケア学会によると、「本資格の維持には日本認知症ケア学会が主催する講座や,認定する他の団体が開催する講座へ参加により5年間で30単位以上を取得していただくことが必要です」とあります。理由としては、常に新たな知識・技能の修得を資格維持の要件としているため、更新制の資格となっているのです。
開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
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第9回試験 (2013年) |
7533 | 3715 | 49.3 |
第10回試験 (2014年) |
6295 | 3365 | 53.5 |
第11回試験 (2015年) |
7319 | 4375 | 59.8 |
第12回試験 (2016年) |
7467 | 3983 | 49.3 |
第13回試験 (2017年) |
6029 | 3266 | 56.5 |
※参考:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士公式サイト「認定試験合格状況」より
上表を見ても分かるように、2013年から2017年までの認知症ケア専門士の試験の合格率は、49.3~59.8%となっております。認知症ケア専門士は民間資格ではありますが、専門性も高く、難易度は比較的高めと言えるでしょう。しっかりとした勉強した上で、専門的な知識の修得が求められます。
※年収の計算は、「きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」となります。
民間資格である以上、資格手当など給与アップといったことは期待できませんが、資格の知名度の高さから、就職や転職時にプラスの評価を得る可能性があります。また、社会的にも認知症への理解が深まっている現代において、2025年の認知症患者数は700万人を超えるという予測がなされていますので、医療・介護・福祉分野における認知症ケア専門士の注目度は高まっています。認知症に特化した専門的な知識・技術を持ち、更新が必要なことから、常に最新の医療知識を持った認知症のスペシャリストとして、現場から重宝される存在になるでしょう。
尚、上位資格として「認知症ケア上級専門士」という資格があります。詳細は下記サイトをご参照ください。
※日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士 公式サイト 「認知症ケア上級専門士」
認知症ケア専門士の資格を持った方は、介護保険施設や福祉施設、医療機関または行政機関といった施設で活躍しています。『認知症ケア専門士は民間資格です』の項目で説明しましたように、介護関連の職種に限らず、看護師や医師、理学・作業療法士といったリハビリ職も含めて、医療系の資格を既に取得している方々も、認知症ケア専門士の資格を得て、認知症ケアに対する知識や技術を修得しています。