言語聴覚士(ST)の資格を持つ方で、更なるステップアップのために、摂食・嚥下障害領域の認定資格として誕生したのが、「認定言語聴覚士」です。摂食・嚥下のリハビリテーションの有効性が認められている現在、摂食・嚥下の領域に特化した「認定言語聴覚士」について、今回は紹介してきます。
言語聴覚士は、「Speech Therapist」略してSTとも呼ばれ、脳卒中や様々な疾患による言語障害(失語症や構音障害など)や聴覚障害によるコミュニケーション障害、または小児に対する発達上の言語・構音の問題に対し、治療・訓練を行うリハビリ職です。1997年に「言語聴覚士法」が成立し、国家資格として制定されました。1999年には第一回言語聴覚士国家試験が施行されています。日本言語聴覚士協会によると、平成31年3月現在で、試験の合格者数は32,863名となっています。
「認定言語聴覚士」とは、平成20年(2008年)に日本言語聴覚士協会によって、認定資格制度として位置づけられました。現在は摂食嚥下障害領域のみならず、失語・高次脳機能障害領域や成人発声発語障害領域まで、担う役割は広がっております。
目的としては、日本言語聴覚士協会によると、「高度な知識および熟練した技術を用い高水準の業務を遂行できる言語聴覚士を養成することにより、業務の質の向上を図り社会に寄与すること」とあります。多くの言語聴覚士が嚥下障害に関わっていますが、養成校で教育を受けてきたのは、まだキャリアの浅い言語聴覚士であることや、40~50代以上の言語聴覚士は学校で学んではいなかった、などといったことが背景にあります。
受験資格 |
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・満5年を超える臨床経験がある ・生涯学習システム専門プログラムを修了した方 ・協会会員であること |
上記の資格を満たした上で、単年度で実施される講習会を3回通して受講した方のみ、最終日の試験を受ける資格があります。
「生涯学習プログラム」とは、言語聴覚士の資質向上及び学習の継続などを目的として、日本言語聴覚士協会が平成16(2004年)より実施しているプログラムとなります。「生涯学習プログラム」は「基礎プログラム」と「専門プログラム」で構成されており、同時進行の受講が可能です。但し、「基礎プログラム」の修了証交付申請を行っていない段階では、「専門プログラム」の交付申請を行うことはできません。
基礎プログラムについて |
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基礎プログラムは下記の6種の講座があり、全ての受講が必要となります。 ・臨床のマネージメントと職業倫理 ・臨床業務のあり方進め方 ・職種連携論 ・言語聴覚療法の動向 ・協会の役割と機構 ・研究法 更に、基礎講座の概要論文や研究発表、学会などへの参加でポイントを4ポイント以上取得することで、基礎プログラムは修了となります。 |
専門プログラムについて |
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専門プログラムは下記の9種の講座があり、その内の4講座の履修が必要です。 ・関連科目/言語・認知発達、言語・認知の加齢変化、音声言語聴覚医学、認知科学、心理学、言語学、音声学 ・サービス提供システム ・成人言語・認知/失語、高次脳機能障害 ・言語発達障害 ・発声発語障害/小児、成人/摂食嚥下障害 ・聴覚障害/小児、成人 ・臨床実習 ・研究法 ・症例研究 更に、論文や研究発表、学会などへの参加などでポイントを8ポイント取得することで、専門プログラムを修了、受験資格を得ることができます。 |
「認定言語聴覚士」は、5年を1クールとして更新する資格となります。日本言語聴覚士協会による認定更新規定は以下のようになっております。
認定更新規定 |
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5年を1クールとし、この間に次の3つの要件のうち2つの要件を満たすこと。
①日本言語聴覚学会へ2回以上参加する、又は、日本言語聴覚学会1回かつ関連学会へ1回以上参加すること。 引用:日本言語聴覚士協会ホームページより |
認定言語聴覚士を取得したから給与が増える、などといったことは基本的にはありません。あくまで言語聴覚士のスキルアップの為の資格となります。また、認定言語聴覚士と言語聴覚士の業務内容に差異などもありません。認定言語聴覚士を取得することで、申請(要・申請料及び登録料)すれば「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士」を取得できます。詳しくは、下記ホームページをご参照下さい。
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会ホームページ「有効他資格に基づく日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の申請について」