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「音楽療法士」ってどんなお仕事? 仕事内容から将来性について詳しく解説!

「音楽療法士」という職業を、皆さんはご存知でしょうか。似たような名前の理学・作業療法士といったような公的な資格ではありませんが、音楽の持つ生理的・心理的。社会的な効果を用いてリハビリテーションを行う専門職となります。今回の記事では、そんな「音楽療法士」について、資格取得方法から仕事内容までを詳しく解説していきます。

音楽療法士は民間資格です

冒頭で述べましたように、音楽療法士の公的な資格はありませんが、幾つかの民間資格が存在します。一般的に知名度が高いものとして、「一般社団法人日本音楽療法学会」が認定している「学会認定音楽療法士」がありますが、それ以外の主な団体・組織は下記をご参照ください。

音楽療法士を認定している主な団体・組織
一般社団法人日本音楽療法学会……学会認定音楽療法士
全国音楽療法士養成協議会……音楽療法士専修・1種・2種
日本インストラクター技術協会……音楽療法インストラクター
一般社団法人 兵庫県音楽療法士会……兵庫県音楽療法士
奈良市社会福祉協議会……奈良市音楽療法士
NPO法人 ぎふ音楽療法協会……岐阜県音楽療法士

「音楽療法」とは?

音楽療法の歴史について

音楽を用いた治療という概念は非常に古く、旧約聖書にも記されているそうです。近代において、「音楽療法」が盛んに用いられ、研究されるようになったのは、第二次世界大戦後のアメリカにおいて、心身共に傷を負った兵士に対して、米軍当局が音楽療法を試みて成功を収めた、とのことです。1950年には、全米音楽療法協会が誕生しています。日本に目を向けると、1995年に全日本音楽療法連盟が誕生し、1997年から音楽療法士の資格認定がスタートしました。その後、2001年に日本音楽療法学会が発足、2018年に一般社団法人化となっています。

音楽療法ってどんな治療法?

それでは、「音楽療法」とはどのような治療法なのでしょうか。海外における注目度と比べると、日本ではまだまだ知名度が低いですが、医療や介護、教育などの分野で少しずつ認知され始めているようです。
日本音楽療法学会による音楽療法の定義は、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、 心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」となっています。音楽療法は補完療法になりますので、根本的な治療が可能というわけではありません。対象となる方のQOLを高めて、心身の回復・向上を目的とした補完医療です。主な音楽療法の種類を以下にまとめましたので、ご参照ください。

能動的音楽療法
・既成の曲や即興演奏などで実際に歌う、楽器演奏する、身体を動かす、音楽づくりなど
受動的音楽療法
・音楽を聴くことで、リラクセーション、瞑想、精神治療など

※参照:日本音楽療法学会ホームページより

音楽療法士の仕事内容とは

音楽療法士の主な仕事は、心身に障害を負われた方々それぞれに合わせた、個別の音楽プログラムを作成した上で、年齢問わず心のケアや症状の緩和、介護予防から病気・事故後のリハビリテーションなどを目的とした治療を行っていきます。医師や看護師、介護士やリハビリ担当者などと連携し、2つの治療法を上手く使い分け、ときには組み合わせながら、治療法の変更や改善なども行っていきます。そのため、カウンセラーとしての役割を担う場合もあります。
また、音楽療法を受ける対象となる人は幅広く、何らかの原因で精神的な疲れを感じている人などにも有効とされています。東日本大震災被災者が受けた精神的なダメージを緩和する療法としても用いられ、災害や事故などから生じるストレスやショックを和らげる効果があると言われています。

音楽療法士の就職先って?

音楽療法の知名度や認知度が、日本ではまだまだ低いということもあり、現状は音楽療法士を専任として勤務されている方は少ないようです。大抵の場合、医療従事者や福祉従事者の方が、音楽療法士の資格を取得するなどして、兼任として働いているのが現状になります。勤務先としては、介護分野や医療現場、教育施設などがあります。介護現場においては、認知症患者のケアなどにも用いられています。また、児童施設、特別支援学校などで、子どもの療育として、社会性や協調性の向上を目的とした音楽療法が採用されています。医療分野では、音楽療法が現時点では保険の対象となっていないこともあって、それほど積極的には導入されていないようですが、精神医療の診察と併用で用いられるなど、音楽療法は少しずつ医療にも浸透しつつあるようです。

音楽療法士を目指すには?

これまで説明してきましたように、音楽療法士には公的な資格というものがありません。現時点では、日本音楽療法学会などが認定する、民間資格を取得するのがよいでしょう。
ここでは、日本音楽療法学会による「学会認定音楽療法士」の取得方法について、説明していきます。

学会認定音楽療法士の資格条件

1.認定校コース
日本音楽療法学会認定音楽療法士資格試験受験認定校(以下、認定校)へ入学し、音楽療法について体系的に学ぶ。

日本音楽療法学会 認定音楽療法士資格試験受験認定校一覧

2.必修講習会コース
学会が主催する(補)資格試験受験のための制度に参加する。

※参加申請に必要な条件
1)日本音楽療法学会の正会員であること。
2)大学・短期大学・高等専門学校・専門学校(2年以上)いずれかを卒業していること。学部・専攻は問わない。
3)臨床経験〔注〕5年以上(音楽を使用した臨床経験2年を含む)を有する。
※ただし、3年でスタートし(補)の受験申請までに臨床経験を積み、合計5年となる場合も可とする。
(補)試験受験に必要な条件
1)必修講習会を修了する。
2)音楽療法関連分野(医学・心理学・福祉・教育)18単位を取得する。
3)臨床経験5年以上(音楽を使用した臨床経験2年を含む)を有する。
4)学会参加、研究発表、スーパービジョンの受講など、200ポイントを取得する。

学会認定音楽療法士の試験の合格率・難易度って?

上述した資格条件を満たした上で、年に1回実施される「学会認定音楽療法士(補)」資格審査・筆記試験を行います。それに合格すると、「学会認定音楽療法士」資格審査・面接試験を受けることが可能となります。
試験そのものよりも、試験に至るまでの条件を満たすことに時間がかかることもあり、資格取得のハードルとしては高めと言ってよいのではないでしょうか。音楽の技術のみならず、医学的知識・心理学・福祉などカバーしなくてはならない分野も幅広いです。
尚、合格率は非公開となっていますが、試験の内容自体は、今まで学んできたことをしっかり把握していれば、それほど難しいものではないようです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成27年(第17回) 7183名 4402名 61.3%
平成28年(第18回) 7173名 4417名 61.6%
平成29年(第19回) 7174名 4446名 62%
平成30年(第20回) 6992名 4399名 62.9%
平成31年(第21回) 6779名 4251名 62.7%

学会認定音楽療法士以外の資格取得方法について

日本音楽療法学会以外にも、「音楽療法コース」や「音楽療法専攻」などがある音楽大学であったり、音楽療法士の養成コースを設けた専門学校などがあります。また、一部の学校では、通信教育(オンライン配信)とスクーリングで資格を取得することが可能となっているようです。大学であれば、カリキュラムの内容に違いがあり、専門学校であれば、実習の内容や就職サポート体制に差異が生じる場合もありますので、事前によく確認してから、進学先を検討するようにしましょう。

音楽療法士の年収ってどれくらい?

繰り返しになりますが、日本における音楽療法士の認知度は低く、専任として勤務されている方が非常に少ないというのが現状になります。医療・介護従事者が兼任していることがほとんどになりますので、音楽療法士としての平均年収を割り出すのは困難です。音楽療法士は専門的な知識・技術を要しますが、民間資格である以上、何らかの手当や待遇面での優遇などの期待はできません。とはいえ、日本でも音楽療法の有効性が認められつつある今、今後は仕事の幅も広がっていく可能性は十分考えられます。

音楽療法士ならではの楽しさ、やりがいって?

音楽療法士を目指す方は、元々音楽が大好きで、音楽の持つ力を確信している人がほとんどかと思います。自分の好きな音楽を通じて、利用者の方々が抱える不安やストレスを解消したり、笑顔を取り戻してもらったりできる喜びは、音楽療法士ならではのものと言えましょう。医療技術ではない以上、即時効果が期待できるものではありません。だからこそ、時間をかけて様々な工夫を凝らした音楽プログラムが功を奏して、良い結果に繋がった時に、大きなやりがいや達成感を味わうことができるでしょう。

音楽療法士が抱える辛さや大変なこと

音楽療法士が一定の社会的地位を確立しているアメリカとは違い、日本における音楽療法士の知名度・認知度はまだまだこれから、というのが実際のところです。求人募集を見ても、待遇の良くない非正規雇用やボランティアでの募集などが多いというのも事実です。また、利用者それぞれの個性や価値観の違いで、なかなか成果が出せないこともあるでしょう。せっかく作成した音楽プログラムが上手くいかず、思うようにいかない悩みは、他のリハビリ職と同じく、多々あるものと言えます。直接的な治療とは違い、リハビリの効果が出るのは時間がかかることもあり、根気強さと真摯な態度が要求されます。
更に、音楽が好きで音楽療法士になった以上、好きなことを仕事にするという喜びと同じくらいに、辛さや困難もあるでしょう。利用者が必ずしも音楽が好きとは限りませんし、リハビリを通じて音楽が苦手になってしまうケースも有り得ます。技術ではない以上、即時効果が期待できるものではありません。だからこそ、時間をかけて様々な工夫を凝らした音楽プログラムが功を奏して、良い結果に繋がった時に、大きなやりがいや達成感を味わうことができるでしょう。

音楽療法士の就職・雇用状況は?

これまで説明してきましたように、音楽療法士を専業として勤務している方は少なく、他職種が兼任しているのが一般的とされています。もしくは、非正規雇用やアルバイト、パートなどの勤務も多いようです。
医療・介護現場などで音楽療法を取り入れ始めているケースも増えているようですが、基本的には他の医療職及び介護職などに就いた上で、音楽療法士を兼務するという形が良いでしょう。
医療・介護従事者の多くがシフト制になりますが、施設によっては24時間体制の場所もあり、夜勤が発生する場合もあります。ご自身が希望する職種・職場がどのようなものかで、勤務時間も大きく変わってきますので、必ず確認するようにしましょう。

音楽療法士のこれから

現時点では音楽療法士は民間資格であり、求人募集もまだまだ少ないのが現状です。日本音楽療法学会では、「国家資格推進委員会」を設置し、国家資格化を目指しての活動も行われているようです。専任で安定して働けるようになるには、今後の展開を見守っていくしかないでしょう。現段階では、医療・介護従事者が音楽療法士の資格を取得することで、それぞれのスキルアップやリハビリテーションの質の向上に繋がることが期待されます。
特に作業療法士などPT・OT・STといったリハビリ職とは、仕事内容も鑑みて、非常に相性が良い資格になります。音楽療法士は臨床経験が資格取得条件になっていることもあり、PT・OT・STの方々は資格取得の際に有利と言えましょう。

まとめ
まだまだ未開拓の分野であり、発展途上と言える音楽療法士ですが、今後の展開では状況も変わってくる可能性は十分に考えられます。
音楽を通して行うリハビリテーションに興味のある方々は、今回の記事を参考にしていただき、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。