リハビリ職の専門家として知られる、理学療法士(PT)。名前くらいは知っていても、実際にどのような仕事をするのか、ご存じないという方も多いかもしれません。
今回の記事では、そんな理学療法士の仕事内容について詳しく解説していきます。これから理学療法士を目指したい、リハビリ職に興味があるという方には必読の内容です!
理学療法士とは、「Physical Therapist」(PT)とも呼ばれ、病気や事故などで身体が不自由になった方のリハビリテーションや、高齢者の方々の身体機能維持、向上をサポートする専門職です。理学療法士は、「理学療法士及び作業療法士法」に基づいた国家資格となりますので、養成校にて必要な知識や技術を学んだ後に、国家試験を受けなくてはなりません。
理学療法士協会の発表によると、2019年3月末の時点での理学療法士の会員数は、119,525人となっており、医療機関や介護施設など様々な場所で活躍しています。
理学療法士の具体的な仕事内容に触れる前に、「理学療法」について説明していきます。理学療法士協会による、「理学療法」の定義は以下をご参照ください。
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。
「理学療法士及び作業療法士法」第2条には「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。
引用:公益社団法人 日本理学療法士協会ホームページより
一般的なイメージとして、「理学療法」というと病院などのリハビリ室で、怪我などをされた方に対して歩行訓練などを行うといったものが挙げられるかと思います。上述した理学療法の定義にあるように、理学療法の基本は、対象となる方の失われた身体機能を回復・改善を目指すことにありますが、あくまでそれは目的の一つです。理学療法士の仕事には、運動機能の回復のみならず、日常の生活動作の改善を図り、生活の質(QOL)の向上を目指すといった面もあります。さらには、介護予防で用いられる効果的な運動法なども、理学療法に基づいたものになり、将来的に運動機能の低下が予想される高齢者の方々への予防対策なども、理学療法士にとって、重要な仕事となるのです。なお、理学療法は医療行為に位置付けられており、医師の指示に基づいて行われます。
理学療法には、大きく分けて「運動療法」と「物理療法」といった2種類の療法があります。それぞれの違いについては、以下をご参照ください。
運動療法 |
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運動療法とは、運動を通じて脳卒中後の身体の麻痺や、整形疾患の症状の改善・予防を図ることです。それ以外にも、生活習慣病の改善、予防といったものや、心臓リハビリテーション等の内科疾患に対しても行われております。 |
物理療法 |
物理療法とは、温熱や寒冷、水、電気刺激といったような物理的なエネルギーを用いた治療法です。主に血液循環の改善、筋緊張の緩和、鎮痛作用などを目的としたものとなります。 |
それでは、実際に理学療法士はどのような仕事をしているのでしょうか。医療施設や介護施設など、理学療法士は様々な場所で活躍していますので、幾つかの項目に分けて紹介していきます。
リハビリテーションの大きな流れとして、「急性期・回復期・維持期(生活期)」の3段階に分けることができます。理学療法士は、それぞれの段階において、適切な治療・サポートを行います。
急性期 |
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術後、または発症早期段階で、症状が不安定な時期のことです。大きな動作を必要とするリハビリはできませんが、医師と相談しながら、手足の動作などから始めて、ベッド付近で可能な「起きる」「寝返り」「立つ」「座る」といった基本動作ができるように、リハビリを実施していきます。 |
回復期 |
急性期を経た患者さんの身体機能が、回復に向かう期間です。症状を確認しつつ、リハビリテーション室などで、運動療法を用いて身体機能の維持・改善を図ります。また、物理療法による症状改善、日常生活動作の訓練なども実施し、自立した日常生活が送れるようにサポートしてきます。 |
維持期 |
生活期とも呼ばれ、患者さんのQOLを改善する期間となります。自宅から駅までの付き添いや、福祉機器の利用などの提案、ご家族に対しての介助方法のアドバイスといったように、実生活における様々な基本動作、行動をリハビリを通じて改善していきます。なお、維持期のリハビリを受ける患者さんは、病院から退院した方のみならず、療養型病院などに転院された方も含まれます。 |
老人ホームや訪問看護ステーションといった、介護領域における現場においても、理学療法士は活躍しています。それぞれの症状を考慮しながら、身体機能の維持や改善といった通常のリハビリテーションは勿論のこと、とくに訪問リハビリテーションでは、対象となる方の生活のリズムなどを観察しつつ、より患者さんと密着した形で支援していきます。また、義肢装具や福祉用具といった適応技術提供を行うなどして、患者さんの自立支援のために幅広いサポートを行っていきます。一般的な老人ホームには、施設長を中心として介護職員や看護師といった多くのスタッフがおり、多様な職種の方と連携を取りながら、入居されている方々それぞれの状態に沿ったリハビリテーションのプログラムを作成し、適切なリハビリテーションを行っていきます。介護職員への指導、といった業務もあります。高齢者の方々の介護予防などの取り組みも、現在の理学療法士にとって重要な仕事になっています。認知症予防として適度な運動を取り入れたり、メタボリックシンドロームの対策や腰痛などの解消、健康維持のために地域社会への参加を促し、さらにはそのための地域の環境作りに関わるといったことも、リハビリ職の新たな仕事として注目されています。
行政サービスでは、役所や特別支援学級のサポートも行っています。また、障害者支援施設などで働く理学療法士の役割として、障碍者の自立と一般就労の促進などを目的としたリハビリなどがあります。先天的、または後天的な理由で心身の状態に何らかの困難または遅れがあるお子さんとの関わりも、重要な業務となります。そのお子さんの元々持っている能力を最大限に引き出しながら、生活方法の提案であったり、補装具の検討なども含めて、心身機能の改善を図ります。
身体の動作や分析、傷害の評価といったことのスペシャリストである理学療法士は、スポーツ分野でも重宝される存在です。スポーツリハビリテーションに関わる職場であったり、プロチームのトレーナーなどに所属して、スポーツ選手の怪我の予防やパフォーマンスの向上を目的として、動作改善を促していくといった仕事を行っています。